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2004.11.25

みつけたもの。

 春先の山行で落としてしまったものを探しに、鹿島槍ヶ岳へ行って来ました。
 東尾根の第二岩峰からザックを丸ごと、谷底に落としてしまったんです。友達も一緒だったので、その翌日すぐに、下から登り直して探してみましたが、ザックは見つかりませんでした。その時は警察に遺失物届けを出して、そのうち誰かがみつけてくれるかも・・・くらいに思ったりもしました。雪解けしたらもう少し下に落ちてきて、見つけやすくもなるかも、とも思っていたんです。
 夏になったら探しに行こうと思っていたのに、私は足を骨折して歩けなくなってしまいました。
 もう一度雪が降ってしまったら、たぶんしばらくは見つからなくなるだろうと思い、ようやく足が治りかけた今が、なくしたザックを探しに行く最後の機会だと思いました。
 大谷原の駐車場で車中泊し、朝から、この沢だろうかと思われる涸れ沢を遡上しました。ずいぶん上まで登ったような気がしましたがザックは見つからず、それどころか、はたして無事に来た道を下れるかどうか不安にもなって、捜索は断念しました。つまり、それはなんとなくわかっていたことだったんです。諦めるための行動。ただ、もう少し上に登ればもしかして・・・とつい気になって、ダラダラと登っていたのです。(おかげで下りは少々ヒヤヒヤしました。懸垂下降をしようにも支点をとれるような木がなかなかなかったからです。)
 それでもなんとか下ってきましたが、よくよく上から眺め回してみて、やっちまったぁ!と、思わず大声で叫びたくなりました。そもそも沢筋を間違えているかもしれない・・・。実を言うと、第二岩峰から落としたものがどの沢にたどり着くのかなんて、よく理解していないのです。それでもう一度、本谷に出て、もう一つ上の沢を辿ろうと登りはじめました。
 その時すぐに見つけたんです。そこはまだ、北股本谷なのかその支流なのかという場所で、谷の幅も広く大きな岩もゴロゴロとしている所でした。おそらく春先には、雪崩の先っぽが届くようなところでしょうか。
 それは岩の下に埋まっていましたが、青い人工物のようだったので目立ったのです。拾い上げて手に取ってみると、それはヤッケの一部でした。あの時自分が、暑いからとザックの中に突っ込んでおいたものと同じ会社の製品の一部でした。もしかしたらと思って辺りをさらに探してみると、今度は黄色いものの切れ端が見つかりました。それは、自分が持っていたテントの冬用外張りと同じ製品の一部でした。それが本当に、自分のものである確証はありません。けれどなんだか、自分は泣きながら、他に何か落ちていないかと、しばらくはその辺りをうろうろと探し回ったのでした。結局もう一つ、テントの切れ端を見つけました。それも、自分が使っていたテントと同じ製品の一部でした。
 思うに、自分のザックはもう、この大きな岩の下の土の中に埋もれてしまっているのです。形のあるまま残っているだろうなんて、甘かった。・・・。雪に埋もれ、雪崩とともに谷を下ってきたザックは、岩に押し潰され、破れ、ボロボロになって土の中に埋もれていったのです。きっと、コッヘルやカメラなど、重い物ほど土中に沈んで、二度と浮かんでこないのかもしれません。あるいは毎年、北股本谷に通ったら、少しずつでも何か拾い集めることが出来るのかもしれませんが・・・。

 東尾根で、ザックが落ちていった時のことをよく覚えています。大きなザックだったから、ゴロゴロと勢いよく、真っ白な雪の急斜面を小さな点になるくらいまでずっと長い間、滑り落ちていきました。あれはどうして、自分じゃなかったのだろう・・・。
 最近なんだか、倒れている自分を俯瞰で眺めている自分、という感覚を味わうことがあったりするんです。雪の斜面を落ちていくザックは、あれは自分だったかもしれない。・・・。そう考えると、自分の生き残っていることの不思議さを思ったりもするのです。
 ザックは還らなかった。自分はまた、山に戻れるのだろうか。

 家へと向かう車の中で、久しぶりにクラプトンの『PILGRIM』を聴きました。
 なぜだか涙が溢れてきて仕方がありませんでした。

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