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2003.08.30

クライマーズ・ハイ

Climbershigh

 横山秀夫・著。文藝春秋。題名と、「男には、乗り越えねばならない山がある」の帯の言葉につられて、つい買ってしまった。けれどこれが、素晴らしい本だった。
 時は1985年。群馬県の北関東新聞社記者である悠木は、同僚の安西と、谷川岳にある衝立岩に登る約束をしていた。しかしその夜、日航ジャンボ機が群馬県御巣鷹山に墜落という大惨事が発生し、全権デスクを任された悠木は安西との約束を果たせなくなってしまったのである。一方、一人で出発したはずの安西もまた、山とは無関係の歓楽街で倒れて、病院に運ばれていた・・・。小説は、山岳小説というものではなくて(山岳シーンも、終わりの方にあるが、)むしろ、未曾有の事故と、悠木をはじめとする新聞記者とを描いた、きわめて熱く濃い、人間ドラマと言えるのである。
 事故以前、悠木が安西に、なぜ山に登るのかを尋ねたとき、安西はこう答えたという。「下りるために登るんさ。」・・・下りるために登る。安西のこの不思議な答えを解き明かすことを縦糸に、様々な見せ場が随所にちりばめられて、物語は読者を飽きさせない。全権デスクを任された当時の悠木を取り巻く、人間関係、親子関係の緊張感が、更に衝立岩へ改めて挑戦しようとする現在の悠木へと重ねられて、実に見事に描かれていく。少しばかり自分の記憶にもある日航機事故のことも思い出されて、その裏で展開されていた報道という世界の鎬を削るほどの凄まじさには、目を見張る思いがした。
 が、最後にはとても温かい思いに包まれるというおまけまでついて、とてもお腹いっぱいになる、内容のある一冊だった。
 それにしても、である。・・・(以下、少々ネタバレ。)

「下りるために登るんさ・・・。」安西のこの言葉は、自分の、心の琴線に、どうやら触れてしまったみたいだ。自分はなんのために山に登っているんだろう?  そろそろ本気で、もう町の中の仕事は下りてしまって、山と真摯に向かい合うべきじゃないのか? やっぱり自分が生きていく(生きていける)場所って、山 なんじゃないの? 下りるために登るんさ。・・・。いやいや、今の自分じゃぁ、まるで逃げるために登るみたいだ。現実から。煩わしいことから。全て一度、 下りてしまいたい・・・。下りるために登るんさ。前向きにとらえれば、素敵な言葉なんだと思うけれどな・・・。

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